それから俺が帰る時間になった。




美桜は窓まで行けないから、部屋の中で別れる。




「じゃあな」




俺はまた美桜の頭に手を軽く乗せる。
美桜は悲しそうな顔をした。




美桜の悲痛な表情の意味を知るのは後になる。




窓から外に出る。
6月の梅雨の時期だというのに、雨は全く降ってない。




すっかり枯れた桜の木を見上げる。




すると…




「…もし美桜様に一緒に死んでと言われたら、貴様はどうする?」




桜の木の影から聞こえてきた声。
風が吹いて木の影から束ねられた髪が揺れている。