1人が私の太腿近くまである黒髪を梳かして整える。




もう2人で服を着替えさせる。




これが私の身支度の方法。




支度中、また部屋のドアからノック音がして、私の護衛人・柊 涼音(ひいらぎ すずね)が2人のメイドを引き連れ入ってきた。




涼音は焦げ茶の髪を後ろで一つに縛り、口が隠れるほどに長い襟巻きをしたスーツ姿の女性。




その辺のメイドとは一際違う。




涼音が連れてきた2人のメイドは窓を開けたり、本棚を整理している。




「おはようございます、お嬢様。ご体調に何か異変はございませんか?」




涼音のいつもの第一声に私はただコクリと頷くだけ。




話したくないわけじゃない。
涼音のことが嫌いなわけじゃない。




話す必要がないから話さないだけ。




話したとしても涼音は他人事のような返事しかしないから。