九条院家屋敷。




九条院家第3男の龍之介は自室のデスクの上に並べた数枚の招待状と、一枚の写真を見つめていた。




すると廊下から速足で近付いてくる足音が聞こえた。




その足音は龍之介の自室の前で止まると控えめなノック音が響く。




「龍之介様、璃玖です」


「……入れ」




龍之介の返事を聞いて扉が開く。
入ってきたのは龍之介の護衛人、柊家第一分家頭補佐の璃玖(リク)だった。




いつも大きく開かれている栗色の瞳は伏せ気味であることに気付いた龍之介は、僅かに眉間に皺を寄せる。




「誰かが失敗したのか?」




失敗。
それは言うまでもなく黒女の導のことだろう。




璃玖は俯きながらも龍之介が座るデスクに近付いていく。