「外国は色々と物騒だからね。
何かと気を付けるんだよ?
特に……ちょっと手紙を出しに外に出掛ける時、とかね?」


「……っ!?」




また連絡するよ。




文人は絵里香の肩に一瞬だけ手を置いて立ち去っていった。




文人を乗せた車が去っていく音が聞こえると、絵里香は緊張が解けたのかその場に座り込む。




「絵里香様……っ!」




真は慌てて駆け寄り、絵里香の体を支えた。
その体は未だ恐怖に怯えるかのように小刻みに震えていた。




「…美桜に手紙すら出すことを許さず、いつでも見張られてるだなんて……!
虫酸が走るわ……っ!」




昔から優秀だった絵里香は分かりたくなくても、文人の言いたいことがすぐ分かってしまった。




それだけが昔から嫌で嫌でたまらなかった。




文人のあの言葉は絵里香への脅しだったのだ。




美桜に手紙を出そうとするなよ、少しでも怪しい動きをすれば見張りが文人に伝えると。




見張りとは絵里香を診てくれるという医者か、それとも他の者か、すれ違う人全てが見張りではないのかと恐怖に怯えてしまう絵里香。