部屋にある小さなベランダに出る。
まだ暑さの残る夜だけど、私の頬を優しく撫でる風が心地いい。




『九条院家の次期当主になるには、黒女に次の黒女を産ませるか…黒女である美桜を殺すか、そのどちらかをした者にする…と』




絵里香姉様の言葉を思い出す。




外の世界に出たことで、ついに命を狙われるようになってしまった。




誰がこのルールを提案したのかはすぐに分かった。




そしてこのルールに乗っかってくるであろう姉様も。




でも怖さは感じない。
それはきっと喜史さんや樹さん、梨緒さんにヤマト、テツ…皆さんがついているから。




何より私の隣には……




「…風邪引くぞ…美桜」


「悠汰…?」




背後から優しい手つきで上着をかけてくれたのは悠汰だった。




いつの間に私の部屋に入って来たんだろう。
全く気が付かなかった。




私の考えていることが分かったのか、悠汰は慌てて弁解し出す。




「あ、いや、ちゃんとノックした!
何回しても返事がないから…その…気になってだな」


「…ふふ、そんな慌てなくても分かってるから大丈夫よ?」




慌てる悠汰が何だか可笑しくて笑ってしまった。