そんな涼音を見て微笑むと、次には真剣な表情を悠汰に向ける。
絵里香を見た悠汰も自然と表情が引き締まる。




「これからがきっと残酷な修羅の道になるわ。
もう聞いてると思うけど、兄弟達(彼等)は美桜を人間ではなく道具として利用し使い終われば捨てる、そんな人たちよ。


どうか美桜を最後の最後まで人として生かして欲しい。
人として…守り抜いて……」



(私はもう近くにはいてあげられないから……)




大事なところは言わずに心の中で呟いた。




頭を下げた絵里香に悠汰は一瞬だけ目を丸くしたが、すぐにふっと笑い目つきを鋭くした。




「当然だ。何があっても、美桜は守り抜く」




悠汰の鋭くそして真っ直ぐな瞳で見られ、絵里香は満足したように微笑んだ。




(強くて真っ直ぐな目。
こんな人と出会って、守られて…美桜、あなたは幸せ者ね)




絵里香は窓から見える月を見上げた。




(あなたなら大丈夫。
あなたならきっと最後まで人として生き抜けるわ……)




絵里香が見上げた月は煌々と輝き、どこか寂しそうに微笑む絵里香を照らしていた。