しばらく沈黙が続いたが、再び絵里香が口を開いた。




「…でもあなたが美桜と出会ってくれた」


「…え?」




悠汰が顔を上げると、絵里香が先程とは違い穏やかな表情で悠汰を見つめていた。




「あなたが美桜を見つけて、外の世界に連れ出してくれた。
道具として生きて死んでいくという呪縛から解き放ってくれた。


何より、美桜に人として生きることを選ばせてくれた。
悠汰さん、あなたには感謝してもしきれないくらいに感謝してるのよ」




絵里香は悠汰に微笑むと、悠汰の隣にいた涼音を見た。




涼音は涙を堪えて俯いている。




「…涼音、あなたもよ」


「…っ!私も…ですか…?」




目を見開いて顔を上げた涼音に、絵里香は微笑みながら「えぇ」と言って頷いた。




「あなたが美桜に自由を与えようと思わなかったら、美桜は外に出れなかった。


例え悠汰さんが助けに来ても、きっとあなたの力で悠汰さんは美桜を助けられなかったわ。
あんなに綺麗だった髪を切ってまで美桜を助けて、忠誠を誓ってくれたのでしょ?


……その髪だと紗七に似てるわね?」



「ご、ご冗談はやめてください」




紗七に似てると言われすぐに反対した涼音だが、紅潮した頬を見ると嬉しいようだった。