部屋に入ると絵里香は布団の上に上体を起こしていた。




「こんな姿勢でごめんなさいね。
まだ体調が万全ではなくて……」


「あ、いや……」




絵里香の微笑む姿を見て、悠汰は美桜と姿を重ねた。
それほどまでに絵里香は美桜と似ていた。




悠汰と涼音は部屋の出入り口付近に座り、無言を貫いた。
涼音は早く言えという視線を悠汰に向けていたが、悠汰は中々聞けずにいた。




「…それで…悠汰さんは私に何を聞きたいのかしら?」




絵里香は目を細めて悠汰を見つめる。
悠汰は一度絵里香を見てから、俯いて自分の膝の上にある手を力強く握る。




そして覚悟を決めたように拳に更に力を込めると、悠汰は真っ直ぐに絵里香を見た。




「黒女の導は次の黒女が産まれたら、産ませた男が九条院家の次期当主となり、産まれた黒女は屋敷に幽閉されると聞いた。


だとしたら黒女、黒髪の九条院家の女は一人のはずだ。
でもあんたは美桜と同じ黒髪で…」




頭の中が混乱していて、悠汰はこれ以上は言葉が出なかった。




だが絵里香には悠汰が何を言いたいのかが分かり、悲しそうに眉をひそめて微笑んだ。




(そう…やはり気付く人には気付かれてしまうのね)




自身の手を見つめて悲しそうな表情を浮かべる絵里香を見て、真もまた眉をハの字にして絵里香を見ていた。