「…こんな時間に何の用だ……涼音」


「足音で私だと分かってしまうとは、さすがは第2分家の頭だけはあるな」




真なら分かって当然と言うような口ぶりで現れたのは涼音だった。
そんな涼音に真は呆れたようにため息をつく。




そして涼音に隠れている人物を見ると、僅かに目を見開いた。
涼音に隠れるようにして背後にいたのは悠汰だった。





「坊主がどうしても絵里香様にお尋ねしたいことがあるらしいんだ」




涼音は背後にいる悠汰を親指で指差す。
そしてその場で方膝をついて座り、頭を下げた。




「…このような時に申し訳ありません、絵里香様。
鷹沢組の若造が絵里香様にお尋ねしたいことがあるとのことでして…
絵里香様の体調が良いのであれば聞いてやって欲しいのです」




涼音は目の前に絵里香がいないのにも関わらず、まるで目の前にいるかのように丁寧に話した。
いつもは男のような口調だが、絵里香に対して急に丁寧なものになり、悠汰は目を丸くして姿勢を低くする涼音を見下ろす。




くすっ




姿は見えないが丁寧な涼音の口調にどんな姿なのかを想像したのか、絵里香は思わず笑ってしまった。




「そんなに畏まらなくてもいいのに。
…分かりました。涼音、それに悠汰さんと仰ったかしら?入っていいわよ」




絵里香の許可を得て涼音はお礼を述べると立ち上がり、部屋の中へと入った。
悠汰も涼音の後に続いて部屋に入る。