「…ん、……」




絵里香はゆっくりと目を開けると、見知らぬ天井が映った。
ぼんやりとする視界を数回の瞬きで治すと、寝かされていた布団の傍に正座していた真を見る。




目覚めた絵里香に真は安心したように微笑む。




「真、あなたに抱えられてからの記憶がないのだけど…ここは…」




体を起こそうとする絵里香に気付いた真はすぐに手を添え、絵里香を支えるを




「ここは鷹沢組の一室です。
美桜様が組長に頼んで用意してくださいました。
先程美桜様がいらして、今日は遅いので泊まっていくようにとのことです」




絵里香は障子についているガラスから外を見る。
鷹沢家に来た時は昇り始めだった月も、既に見上げるほど高いところまで昇りきっている。




絵里香が鷹沢家に入ってからどのくらいの時間が経ったのかを物語っていた。




「…そう。こんな時間まで眠ってしまったのね。
何から何まで美桜には気を遣わせてしまったわ」


「今日はもう遅いので、また明日美桜様にお礼をもうしましょう」




真の言葉に絵里香は優しく微笑み返事をした。
真は起きた絵里香の肩に上着をかけ、「何か飲み物をいただいてきます」と言って立ち上がった。




すると廊下からこちらの部屋に向かって歩いてくる複数の足音が聞こえてきた。
真っ先に気付いた真は表情を鋭くして廊下の方向を見た。




足音に気付いた絵里香も眉間にシワを寄せ警戒する。




「…真、これは…」


「絵里香様はここでお待ちください」




絵里香を安心させるように微笑むと、真は障子に体を寄せ近付いてくる足音に耳を済ませた。




(…来るのは二人。……この足音は…)




一つの足音を聞くと真は警戒を解き、再び絵里香を見る。
絵里香は眉をハの字にして心配そうに真を見つめていた。




「…大丈夫ですよ、絵里香様」




足音が部屋の前で止まる直前に真は障子を開けて廊下に出た。