「…美桜様のお顔を見るためだけにわざわざ敵地に絵里香様をお連れするほど、お前も愚かではないだろ?…真」


「全くお前は相変わらずかわいくないな、涼音」




真は肩を竦めて笑った。
二人の会話を聞いていた絵里香の表情は先程の穏やかなものから真剣なものへと変わった。




絵里香の表情が変わったを見て、美桜は顔をグッと引き締めた。




「美桜。…そして鷹沢悠汰。
あなた達に伝えなくてはいけないことがあるの。


……九条院家の黒女の導について」













鷹沢家の一室には美桜と悠汰、涼音、喜史、樹、梨緒、そして絵里香と真が、廊下にはヤマトとテツが控えている。




「…いきなりの訪問にかかわらず受け入れてくれたこと感謝します。
私は九条院家長女の九条院絵里香と申します。
そしてこれは私の護衛人の……」


「柊家第2分家、頭の柊真と申します」




絵里香は丁寧に自己紹介をし、真もその後に続いて自己紹介をし二人揃って頭を下げた。




二人の自己紹介を聞いても因縁の相手である九条院家がいることに警戒しているのか、誰も言葉を発しない。
それどころか喜史や樹は僅かに表情を鋭くした。




その微妙な変化を察した絵里香は頭を上げると真っ直ぐに喜史を見た。




「我が九条院家と鷹沢組は今や敵も同然。
ですが、私は美桜を連れ戻そうなどと全く考えておりません。


黒女の導などというあんな残酷なシステムに従うつもりもなく、今日は美桜の味方として参りました」




絵里香の言葉に喜史は眉を僅かに動かして反応した。
だが何も言うわけでもなく、ただ絵里香を睨むような目で見つめている。




絵里香の言葉に身を乗り出したのは樹だった。