美桜が抱きついたのは九条院家第一女の絵里香だった。
絵里香はしっかりと美桜を抱き締め、その再会に目を潤ませた。




「美桜、よく顔を見せて?」




絵里香が美桜の頭を優しく撫でると、美桜は体を密着させたまま絵里香を見上げた。




絵里香を見つめる美桜は目を輝かせ、嬉しそうな表情をしている。
そんな美桜を見て絵里香は美桜よりも濃い深海のような目を細めた。




「…あなたが屋敷から出たと聞いて心配してたのよ。
大丈夫?何も嫌なことはされてない?ちゃんと食べれてるの?」




優しい手つきで美桜の頬を撫でる。
美桜はくすぐったそうに身を捩る。




「絵里香姉様は心配しすぎですわ。
鷹沢組の皆様、血の繋がらない私を家族だと言ってくれて…とてもよくしてくださってます。


絵里香姉様こそ体調は大丈夫なのですか?こんな時間にこんなところまで来て」




絵里香は自分のことよりも人の心配をする美桜に呆れた気持ちと、何ともなさそうな様子の美桜に安心した気持ちを含めてため息をついた。



互いに寄り添う二人は双子と言われても過言ではないほどに似ていた。




そんな美桜と絵里香を離れたところから見ていた悠汰は微笑ましく思いながらも疑問に思うところがあった。




(…美桜と同じ黒髪……
黒女は九条院家に一人だけのはず…)




悠汰が何を考えているのか分かった涼音だが、何も言わずに絵里香の斜め後ろに控えている護衛人の真のもとに近付いた。