「あの星々が流れるなんてほんとなの!?
私が何も知らないことを良しとして冗談を言ってるんじゃないの?」


「俺が冗談なんて言うわけねぇだろ。
今度流星群が見れるときに連れてってやるからそんな騒ぐなよ」


「流星群!?それって星がたくさん流れていくのよね!?
きっと今日の星空より綺麗なのよね!」




すっかり暗くなってしまった帰り道。
私は悠汰が言った流れ星のことで頭がいっぱいだった。




星空は屋敷の窓から見たことがあっても、流れ星というのは見たことがなくて。
あの丘で悠汰が「流れ星見れなかったな」なんて呟くものだから。




流れ星を知らない私は当然のように興味津々となり、帰りはずっと流れ星の話をしていた。




「あ、涼音!涼音は流れ星というのを見たことある?
どんななのかまた教えて……涼音?」




後ろからついてきていた涼音にも聞こうと足を止め振り返ると、いつの間にか涼音は私のすぐ後ろにいた。




よく分からずに涼音を見つめても、涼音は鋭い目つきでただ前を見ていた。




「…美桜様、私の後ろにお下がりください」




涼音は前を見たまま私の盾になるように私の前に出た。
ヤマトも前に出てきて涼音の隣に並んだ。




前に何かあるのだろうか。
そう思いながら視線を前に向けると、悠汰の家の前に黒い車が停まっていた。




私はあの車を知っている。
あの桜の家紋がついた車を。




私達の存在に気付いたのか車のドアが開き、誰かが車を降りた。
そしてすぐに別のドアを開け、そこからもう一人降りてきた。




暗くて見えなかったその姿は街灯の下に来て、やっと誰なのかが分かった。




私を連れ去りに来たのではない安心感と、お元気そうな姿に涼音の制止の声も聞かずに走り出した。




「…美桜……っ!」




私と同じ長い黒髪をなびかせ、同じように私のもとに歩いてくる。
私は勢いのままに抱きついた。




「…姉様…!絵里香姉様!」