しばらくそのままでいると、絵里香は先程よりも落ち着きを取り戻した。




そして自分をずっと支えてくれていた真の手を握った。




「ごめんね、真。少し取り乱してしまったわ」


「大丈夫です。絵里香様があれほどまでにお怒りになるのも、頷けますから」




真は眉をハの字にして微笑み、絵里香に握られた手にキュッと力を入れた。




絵里香は真の優しさに泣きそうになりながら、堪えるように一回深呼吸をした。




「…しっかりしないと。美桜を守れるのは、九条院家(この中)では私だけなのだから。
…真、あの情報は確かだったの?」


「…はい。調べましたところ、美桜様は確かに鷹沢組のお屋敷にいらっしゃいます」


「…やはりそうなのね」




真の言葉に絵里香は真っ直ぐに真を見つめ、深く頷いた。




そして一瞬何かを考えてから、絵里香はいつもの速度で歩き出した。
真もその後に続いて歩き出す。




「真、明日の夕方の会食はキャンセルしといて。あんな権力自慢の会食よりも美桜を優先するわ」


「承知しました」




絵里香の指示に真は歩きながらも器用に頭を下げた。




(…美桜。あなたにあれ以上苦しい思いはさせないわ…!)




絵里香が決意を固めて廊下を歩いているその影では、文人が想定内といった笑みを浮かべ聞いていたことは文人の護衛人の神しか知らない。