文人が呼び出した兄弟会議終了後、絵里香はカツカツとヒールを鳴らして早足で歩いていた。
「え、絵里香様…そんなに慌ててはお体に触ります…!」
護衛人の真は絵里香を心配しながら絵里香の後をついていく。
絵里香はスピードを落とすことなく数メートル進むと急に立ち止まり、拳をつくって壁に思いっきり叩きつけた。
「…どうして!どうしてあんなことを平然と笑って言えるの……!?」
「…絵里香様……」
真は絵里香の怒りで震える肩にそっと手を添えて支えた。
絵里香は先程文人が言った追加ルールを聞いて、怒りが頂点を越えていた。
「美桜は一族繁栄のための"道具"でも"捨て駒"でもないのよ…!?
お父様もお父様よ…どうしてあんなことを許可なさったの……!
あんなの、人間が言う言葉じゃないわ……!」
絵里香は苦しむように眉間にシワを寄せ、頭を両手で押さえた。
真はただ絵里香を落ち着かせるように背中をさすることしかできない。