自分で兄弟達に最近の様子を問いかけても、文人の返事は素っ気なく笑顔を見せるだけだった。




だが兄弟達にはそれがただただ恐怖でしかなかった。




昴が歴史ものの本に興味を示しだしたのも、
絵里香が具合悪く痩せてしまったのも、
龍之介が重文に脅されて困っていたのも、
結子が苛立っていたのも、




誰もそのことは文人には言っていない。




つまり文人は本人が何も言ってないことを知って、それに長男として対応をしたのだ。




護衛人は例え九条院家長男に主の情報提供をされても、主のことはそう容易く口外しない。




それは知らないところで文人が自分達のことを知り得ているということであり、そう思うだけで彼等には恐怖しか芽生えない。




だから兄弟達は文人(彼)の前では、文人(彼)が手の届く範囲にいる限り、下手な動きはできないのだ。




それほどまでに九条院文人という九条院家長男は、絶対的な存在なのである。