文人は次に絵里香を見た。




「絵里香は最近体調はどうなの?
前会ったときよりも痩せて見えるけど」


「…確かに少し痩せましたけど、最近は調子がいいです。
文人兄様が送ってくださった薬が効いてます」


「そっか。それはよかった」




文人は先程昴に見せた笑顔を絵里香にも見せた。




「龍之介は父様に脅されたりとかされてない?
あの人はすぐ誰かに毒を吐いて、ストレス発散するから」


「…いえ。文人兄さんが父上に掛け合ってくださったお陰で、最近は何も言われません」


「そっか。それはよかった」




文人は先程と同じように笑った。




「結子は随分と忙しいみたいだね。
僕が遅くなったせいで苛立たせてしまって、申し訳なかったね」


「い、いえ!そんなことはありませんわ!
文人お兄様に会うためだったら、仕事など二の次ですもの!」


「そっか。それはよかった」




文人が来る前に騒いでいたことがバレていて結子は焦っていたが、文人はそれをなんとも思わずただ同じように笑った。




「湊は…そうだ、美桜を手に入れるのに失敗して権利剥奪されたんだったね。
会えないのが悲しいよ」




文人はいつも湊が座っている席を悲しそうに眉をハの字にすることもなく、ただジッと見つめた。




そして最後に文人は机に伏して寝ている陽平を見た。




「寝る子はよく育つと言うけど、陽平はいつも通り眠そうだね。

凪沙、陽平は学校でもこうして寝てるの?」


「え、あ、はい。
学校だろうと家だろうと関係なくいつも寝ておられます」


「そっか」





陽平の背後にいた護衛人の凪沙は、いきなり自分に話を振られて驚きつつも答えた。




それについても文人は簡単な返事をして笑うだけだった。