「それにしても…」




結子は扇子で自身を扇ぎながら、表情を先程よりも鋭くし苛立つ様子を見せた。




「どうしてまたこんなところに来なければならないの!?
こんな紙が届いたから来てあげたって言うのに、手紙を寄越した本人が来ないじゃない!
アタシだって暇じゃないんだから、早くしてくれないかしら!」




バンッ
結子は机に思いっきり持っていた紙を叩きつけた。




結子が机に叩きつけた紙には『20時に九条院本家の会議室にて、次期当主の座についての話し合いを行う』とだけが書かれていた。




絵里香や龍之介、そして机に伏して寝ている陽平の前にも同じような紙が置かれていることから、兄弟全員にこの紙が送られているというのが分かる。




パタン
隅に座っていた昴が音をたてて本を閉じた。




「悲しんだり喜んだり、かと思えば急に怒り出したりお前は静かに待つということを知らないのか、結子」


「…あぁ?」




昴の言葉に既に苛立っていた結子は昴が年上だの兄だの関係なく、睨みつけた。




「あなたも口を挟まずに静かに本を読んでる待つってこと知らないのですかぁ?昴お・に・い・さ・ま?」




結子は閉じた扇子を顎にあてて見下すように昴を見て、ニヤリと笑った。




2人は何も言わずに睨み合う。
それは権力を争う者同士のいがみ合いそのものだった。




睨み疲れたのか飽きたのか、結子は昴から目を逸らした。




「…そもそも誰なのよ!こんな意味不明な紙をよこしたのは!」




結子は腕と脚を組んだ。