悠汰は何も言わずに下を向いている。
両手をギュッと握っているが、前髪で顔が隠れていて表情が見えない。




「正論過ぎて何も言えねぇってか!?
だったらやられる前に大人しく帰るんだな!」




人を馬鹿にしたような湊の笑い声が部屋中に響いた。
湊の背後にいる藤馬も手で口を覆い、必死に笑いを堪えている。




だが悠汰は帰る様子見なく、それとは逆に口角を上げた。




悠汰が笑った瞬間、湊の目つきが鋭くなった。




「…そんなこと言ったら、お前らの方が無意味じゃねぇか。
美桜は一人の人間だ。お前らのような権力にしか興味のない"権力の道具"とは違うんだよ」




悠汰は顔を上げ、湊を馬鹿にしたようにふっと嘲笑った。




そんな悠汰に当然湊の怒りは頂点を超えた。




「…この俺に舐めた口ききやがって!
その口二度と喋れねぇようにしてやる…!」




湊が指を鳴らすと、湊が入ってきたドアから多くの護衛人が武器を持って入ってきた。
護衛人達はあっという間に悠汰達を取り囲んだ。




悠汰は護衛人達を睨んでいると、檻の方から視線を感じた。
視線の先を見ると、床に倒れた美桜が弱った目つきで悠汰を不安そうに見ていた。




(…心配すんな。必ず助ける)




その思いを伝えるように美桜を見て、微笑んだ。
美桜には伝わったのか、美桜も弱々しくも微笑み返した。




「…殺れ」




湊の声を合図に、護衛人達は一斉に悠汰達に襲いかかった。