(美桜を助けねぇと…!)
悠汰は美桜を助けようと、隣にいた梨緒とアイコンタクトをとる。
鍛え上げた梨緒の手足であの頑丈なガラスを割ろうという魂胆だろう。
だがそんな二人のアイコンタクトも、湊は気付いていた。
「てめぇら一歩でもこっちに近付いてみろ?美桜はこうだ」
湊は手に持っていたスイッチを悠汰達に見せるようにして持ち上げ、スイッチを押した。
「…っ!あ゛ぁぁぁぁぁっ……!!」
美桜が急に耳を塞ぎ、その場に倒れもがき出した。
だが外にいる悠汰達には何も聞こえないし感じない。
「てめぇ!美桜に何した!?」
悠汰は力強く手を握ると、鋭い目つきで湊を睨んだ。
湊は怯むことなくニヤリと笑って悠汰を見た。
「お前らが一歩でもこっちに来れば美桜は、頭が割れるような音を何度も聞くことになる」
湊はもう一度スイッチを押した。
「…う゛っ!あ゛ぁぁぁ…!!」
美桜はまた耳を塞いで床に倒れた。
耳を塞いでもがいてもその音から逃げられるはずなく、苦しむしかない。
悠汰は今までにない怒りで気が狂いそうだった。
そんな悠汰を湊は物ともせず、ふっと笑った。
「何そんなに怒ってんだよ。こいつはただの子供産むための道具だろ?
そんな道具に向ける感情なんて、無意味。
だからお前がこいつを助けようとしたのも無意味ってことなんだよ!」
湊は両手を広げて高笑いした。