車、というものに初めて乗ったけれど、景色が速く過ぎていってなんだか面白くない。




今度はゆっくり外の世界というものを見てみたい。




そう言えばきっと涼音が『私が連れてって差し上げます』って言うのかな。




涼音。
あなたは助けに来ないでと言った。




でも私はあなたを助けようとしている。




これは正しいことなの?
本人が望んでいないことをやって、涼音は喜んでくれるの?




そして私は涼音を助けることが出来るの?




考えれば考えるほどに不安が募り、私をどん底へ引きずり落とそうとする。




でも。




「大丈夫だ。あいつを必ず助けて、お前も必ず連れて帰る」




悠汰、あなたが私の手を握って優しい言葉をかけてくれるから私は前に進める。




悠汰だけじゃない。




「美桜さんの身は私が守るから安心して!」


「美桜嬢、俺もいやす!」




梨緒様やヤマトが、私の大切な家族が笑ってくれる。




彼等に出会えて本当に良かった。




色んな話をしていると、あっという間に湊兄様の屋敷に到着した。




悠汰の手を握り車を降りると、屋敷の門がゆっくりと開いた。




そこに立っていたのは湊兄様の護衛人。




「藤馬…!」


「お久し振りですね、美桜様。そして…」




藤馬は私に軽く頭を下げると、次に悠汰達を見た。
その笑みにゾッとした寒気を感じた。




「お待ちしておりました、鷹沢組の皆様。
さぁ、坊っちゃんがお待ちです。どうぞ中へ」




藤馬が手で先を示し、先頭を歩き出した。




ここに涼音がいる。




必ず助けて、私もあの家へ帰るんだ。




胸元の服をキュッと握り、私達は藤馬の後に続いて屋敷の中へと入った。