【Side 悠汰】




部屋が明るくなってきて、自然と目が覚める。




いつもはこんな明るさじゃ目は開かないのに、眠りが浅いせいで早く目が覚めてしまった。




眠りが浅いのも昨日の胡梅の話があってからだ。




あの美桜の表情が頭から離れねぇ。




-昨日美桜が涼音を助けて欲しいと俺らに頼んだ後-




俺らは美桜の部屋に集結した。




「仕入れてきた情報を伝えるわ。
先程、九条院湊の屋敷に潜入してきたわ。そしたら気配に鈍い護衛人の藤馬が私の気配に気付いていたの。


いや、気付いていたと言うよりは、私が来るのを待っていたようだった。
藤馬が私に差し出してきたのは、一枚の紙よ」




胡梅は胸の谷間から二つ折りになった紙を俺に渡した。
隠しておく場所がおかしいが、今はそんなことに突っ込んでる暇はねぇ。




俺が紙を開くと、美桜が隣にやって来て紙を覗いた。




『美桜を渡せば涼音を解放する。美桜一人で来いとは言わない。皆さん総出でお越しください』




紙にはこう書いてあった。




美桜を渡せばあいつを解放する?
端から俺らには美桜を渡すつもりはないのを分かって言ってる。だからあいつを利用して手に入れようってことか。




しかも皆さん総出でお越しください?
美桜を手に入れれば涼音(あいつ)も俺ら諸共消そうって魂胆が見える。




こいつは結局、美桜だけを手に入れることを目的にしてる。
ついでに俺らもやっとく、そんな考えだろう。




舐めやがって。




美桜はこんな文でお前のところになんか行くわけないだろ。




美桜はもう外の世界に出たんだ。
自ら籠の鳥になろうだなんて考えはないはず。




美桜もそう言うと思い、俺は美桜を見た。




でも美桜は何も言わずに真剣な目で紙を見ている。




そんなわけ…ないよな?美桜。
お前が自ら身を渡すなんて、しないよな?




俺らしくもなく、美桜の何も言わない様子に不安になった。