『今日からここが君の部屋だ。好きに使っていいよ』




喜史様に言われたこの部屋は私がいた屋敷よりは小さいけれど、一人には十分すぎるくらい広い。




一階は和風の家なのに、二階は洋風の部屋があった。
私は迷わず悠汰の隣の洋風の部屋を選んだ。




涼音が捕まったと知り、すぐに助けないとという思いがあった。




『お前が行って何が出来る?
逃げてきた九条院家に戻って、涼音が命懸けでお前を助けたのに、お前はそれを無駄にしようとしている』




お爺様の言う通りだった。




私には何も出来ない。
涼音を助けに行ったところで、私が捕まり涼音は自由になる。




でもそんなの涼音は望んでいない。




九条院家にいた頃は『繁栄のための道具』という、道具だけど私にも出来ることがあった。




でも外の世界に出た私には、何もない。




フツフツと感じたことのない苛立ちを感じた。