「柊涼音は一人でこの家にやって来て、『美桜様を助けて欲しい』と我々に協力を頼んできたんだ」


「…涼音が?」




喜史様が静かな声で言った。
涼音が私のために、私を助けるために悠汰達に協力をお願いした。




仕事に従順な、あの涼音が。




涼音が情に身を任せて私を助けようとしたなんて。




謀反の疑いをかけられることを覚悟した上で、涼音はここに来た。




「お前が一人で助けに行ったところで、またお前が捕まるだけだ。
その足掻きが無駄なんだよ」




そうだ。
私が助けに行ったところで、私には何が出来る?




私が悠汰に助けられる時、眉をハの字にして微笑んだ涼音の顔を思い出す。




あの時、涼音は口を動かし何か言っていた。




「……っ!」




両手で口を覆い、その場に座り込む。




どうして、どうしてあなたはそんなに私のことを。




道具だった私にどうして『生きてください』なんて言って助けたのよ。




涼音………!