顔の前に落ちてきた髪を、手で後ろに持っていく。




すると悠汰の目は自然と包帯の巻かれた、私の手首へと移った。




「手首の具合はどうだ?」




悠汰は優しく私の手首に触れる。
不思議。自分で触るとチクッとしたのに、悠汰が触ると心地いい。




「悠汰に触られるとなんともないのだけど、自分で触るとチクッとするの。
これはもしかして悠汰が前に経験した"痛い"というものなの?」




自分でもう一度触ってみる。




やはり、チクッと思わず顔を歪めてしまうような感じがした。




包帯の巻かれた手首を見ていると、また悠汰に優しく触れられた。




「そうだ。それが"痛い"というものだ」




自分ではなんとなく予想して答えを考えていた。
これが"痛い"というものではないかと。




でもそれは確かなものではなくて。
悠汰が正解を言ってくれることで、それは確かなものになるんだ。




これが…痛いという感情。
悠汰はあの時、とても苦しそうにしていた。




でも私は…



「なんだか、"ちゃんとここにいる"、"生きている"そんな気持ちがする。痛いというのは」




悠汰に微笑む。
悠汰は少し驚いているようだったけど、やがて私と同じように微笑んでくれた。