その苦労を取り除くように悠汰様の頬を撫でようと、手を伸ばす。




そこで自分の包帯の巻かれた手首が目に入る。




藤馬によって手首をキツく紐で結ばれ、跡がついていたことを思い出す。
悠汰様がこれを…?




包帯の上から手首を触るとチクッと感じた。
もしかしてこれが『痛い』?




悠汰様が怪我をして痛がっている姿を思い出し、懐かしむように笑う。




「…ん、……」




その声が目覚ましとなってしまったのか、悠汰様がゆっくりと目を開けた。




まだ眠そうな目をして瞳に私を写すその姿に、また笑ってしまう。




「…悠汰様、おはようございます」




そんな悠汰様に微笑むと、しばらく瞬きをして私の横腹に置かれていた手を動かし人差し指を唇に当てられた。




なんでそんなことをするのか分からず、首を傾げる。
悠汰様は寝起き一番の微笑みを見せた。




「…俺に助けを求めた時は"様"なんて付いてなかったけど?
あとこれからは敬語禁止な」




唇にあった指が移動して、長い黒髪を梳く。




『そんなわけにはいきません』
前の私だったら、きっとこう言ってた。




今の私は、違う。




敬語なしで話すのは涼音くらいだから、あまり使ったことがないけど…




「……おはよう、悠汰」




今の私は悠汰様…悠汰の思いに応えることが出来る。




そう出来るのも、私の見る世界が変わったから。