「…くそっ、煙幕か!鷹沢譲司め…!!」




胡梅が床に投げつけたのは煙幕であり、それは瞬く間に広間に広がった。




そんな時に部屋の扉が開いた。




「…重文様、お呼びで……っ!重文様!ご無事ですか!?」




やって来たのは凱斗。
凱斗は驚き慌てて換気扇を回した。




強力な換気扇はすぐに煙を吸い込んだ。




煙はすぐに消えたが、もう2人の姿はなかった。




凱斗はしゃがみ込む重文に駆け寄り、辺りを見回す。
すると一部の天井の色が僅かに違うことに気付いた。




(天井にいつのまに細工を…!?だが今は重文様のお体が最優先)




凱斗は重文を支えながら立ち上がらせた。




「…鷹沢組だ……!」


「…え、鷹沢組がどうしたのですか?」




ボソッと呟いた重文の言葉を聞き逃さず、凱斗はこだまさせるように聞き返した。




「鷹沢組(あいつら)が美桜を連れ去った犯人だ!
至急息子達を集めろ!
あいつらに美桜を連れ戻させる…!」


「わ、分かりました!」




凱斗はすぐに他の護衛人を呼び、九条院家の兄弟達を集めるように指示を出した。




(おのれ鷹沢組!ただじゃ済まさないぞ…!)




そんなやりとりを聞きながら、重文は心の中で鷹沢組からの宣戦布告を受け取った。




こうして九条院家と鷹沢組の因縁の対決が再び起ころうとしていた……