「…どうして今更ここに来たのですか…?
何度も言ったじゃないですか、『殺されますよ』って。
それなのに悠汰様はいつもここに来る。


私は一族の繁栄のための"道具"。
その道具にどうして命を懸けるのですか?」




私にはずっと理解できなかった。




悠汰様と出会ってから、悠汰様と話すのが楽しかった。





でも悠汰様はどうして殺されるかもしれないと言われても私に会いに来ていたのか、ずっと分からなかった。




命の危機が迫ったら、いくら護衛人の藤馬でさえも死ぬことを恐れている。
それなのに悠汰様は命の危機なんか恐れていない。




恐れる素振りすら見せずに、部屋の窓からやってきては優しい暖かい声で私の名前を呼ぶ。




そして私に色んなことを教えてくれる。




どうして道具に命を懸けるの?




こんな道具に命を懸けて命を落としたって、何もいいことなんかない。




ポン




俯いていた私の頭に優しい温もりが置かれた。
顔を上げると、悠汰様が笑みを浮かべて私を見ていた。