色のない世界。【上】





湊兄様の言葉に、部屋にいたメイド達が黙っていなかった。




「み、湊様!困ります!お嬢様に万が一傷でもできてしまったら…!」





だがメイドは所詮メイドの分際。




下働きであるメイドに、九条院家直系の子供には勝てやしない。




「あ"?なんだよ、この俺の言葉に意見するってのか?
それは俺が誰だか分かってて言ってんだろ?


俺が九条院第4男だと知ってて言ってんだよなぁ?あ"ぁ!?」


「…も、申し訳ありません!」




湊兄様が怒って椅子を思いっきり蹴れば、メイドは謝るしか出来ない。
それほどまでに権力には差がある。




下の者は上の者には歯向かえない。
この家だけでなく、どの上下関係であってもそれは同じ。




下の者が上の者に意見を言えるなら、こんな上下関係は存在しない。




そんなことを思っているうちに、私の両手首は紐で縛られ頭上でまとめられた。




そしてベッド柵にその紐はさらに縛られ、私は動くことができなかった。




その私を見た湊兄様はすぐに機嫌を直した。




「いいか、俺が出てくるまで絶対入ってくんなよ!
藤馬、お前は部屋の外で見張ってろ」


「しょ、承知しました」


「分かりました。何かあればすぐに言ってくださいね」




最初にメイド達が怖がりながらも返事をして、次に藤馬がニヤニヤ笑いながら了承した。




なんでか分からないけど、これから起こることから逃げたくて、縛られた手首を動かした。




でもそんな簡単に解けるほど紐は緩く結ばれてない。