湊兄様の言葉に、部屋にいたメイド達が黙っていなかった。
「み、湊様!困ります!お嬢様に万が一傷でもできてしまったら…!」
だがメイドは所詮メイドの分際。
下働きであるメイドに、九条院家直系の子供には勝てやしない。
「あ"?なんだよ、この俺の言葉に意見するってのか?
それは俺が誰だか分かってて言ってんだろ?
俺が九条院第4男だと知ってて言ってんだよなぁ?あ"ぁ!?」
「…も、申し訳ありません!」
湊兄様が怒って椅子を思いっきり蹴れば、メイドは謝るしか出来ない。
それほどまでに権力には差がある。
下の者は上の者には歯向かえない。
この家だけでなく、どの上下関係であってもそれは同じ。
下の者が上の者に意見を言えるなら、こんな上下関係は存在しない。
そんなことを思っているうちに、私の両手首は紐で縛られ頭上でまとめられた。
そしてベッド柵にその紐はさらに縛られ、私は動くことができなかった。
その私を見た湊兄様はすぐに機嫌を直した。
「いいか、俺が出てくるまで絶対入ってくんなよ!
藤馬、お前は部屋の外で見張ってろ」
「しょ、承知しました」
「分かりました。何かあればすぐに言ってくださいね」
最初にメイド達が怖がりながらも返事をして、次に藤馬がニヤニヤ笑いながら了承した。
なんでか分からないけど、これから起こることから逃げたくて、縛られた手首を動かした。
でもそんな簡単に解けるほど紐は緩く結ばれてない。



