「おぉ!黒のワンピースは黒女の正装って聞いてたけど、ほんとにそうなんだな」




やってきてしまった。
私の"道具"としての時間が。




一番最初にやってくるのは誰なのか、大体予想はしていた。
兄弟達の性格からして、この方だろうと考えていた。




その予想が当たってしまった、ただそれだけのこと。




勢いよく部屋に入ってきたのは、九条院家第4男・湊兄様、その背後にいるのは護衛人の柊 藤馬。




湊兄様は誰よりも九条院家の当主への欲が強い。
だから誰よりも先に私を手に入れようとやってくるはずと思っていた。




ただそれだけのこと。
何も感じることなんてない。




ただジッと何も言わずに湊兄様を見ていると、湊兄様は少し表情を鋭くした。




「…チッ、せっかくこの俺が来てやったのになんだその無表情は。
萎えるからやめろよな、行為中にその顔は」


「お言葉ですが、元からこの顔ですので変えることはできません。
私は…"道具"ですから」




何故だろう。
いつも言い慣れていたのに、自分のことを"道具"と言うたびに胸がチクリと痛む。




今までこんなことはなかったのに。




私の言葉に湊兄様は諦めたのかため息をつき、すぐに表情を怪しい笑みへと戻した。




「まぁ、いいや。これからたくさん感じさせればいくら無表情でも、いい表情に変わるだろ。
藤馬、こいつをベッドに縛りつけろ」


「…承知しました」


「…っ!」




驚いて椅子から立ち上がる。
そんな私に構わず、藤馬は私の腕を引っ張り私をベッドへ連れて行く。




そして私はされるがままにベッドに寝かされた。