「…涼音様は1週間程前から行方が分かっておりません。ただ今、仕事放棄の謀反の疑いをかけられ捜索されています」
仕事放棄の謀反……!?
どうして、涼音がそんな疑いをかけられてるの。
しかも涼音は柊家本家の長女。
そんな疑い、すぐに権力でどうにかなるはずなのに。
こんなにも公になってるなんて……
誰よりも仕事に従順で、誰よりも強さを求めて努力してきた涼音が謀反だなんて。
何かの間違いだって思いたいけど、周りのメイド達を見ている限りどうやら事実らしい。
メイド達は涼音がいなくなり清正(せいせい)した表情をしてる。
「…お嬢様がお気になさることではありません。
今は涼音様のことよりもご自身のことだけをお考え下さい」
メイドは笑うこともなく、私を真っ直ぐに見る。
……涼音にお礼くらい言いたかったのに。
16年間、ずっと私の護衛人でいてくれてありがとうって。
悠汰様に出会う前の私なら、絶対にお礼なんて言わなかったのに。
不思議。
悠汰様のことを考えると、たくさんの"感情"が私の中から溢れ出てくる。
……お願い、これで最後にするから。
最後に悠汰様との思い出を、溢れる感情を思い出させて。
もうこれっきり、心の奥に閉じ込めて開かないように鍵をかけるから。
今だけは……



