こんな味のない食べ物なんていらない。




私は一口、二口食べてスプーンを置く。




「お嬢様、もうよろしいのですか?本日はかなりの体力を消耗するのでもっと食べておいた方が…」




メイド達が珍しく慌ててる。




いつもは無表情で私に食事を与えていたのに。




どうせお父様から何か言われたのだろう。
今日はしっかりと食べさせろだとか。




お父様の命令に従わないとどんな目に遭うか皆知ってるから。




「…もういい。下げて」




私の一言でメイド達は落ち着きを戻し、食事を下げた。




そしていつも同じことを聞く。




「…涼音は?いないの?」




いつもメイド達の後からやってくる涼音がここ一週間姿を見せない。




私が最後に涼音を見たのは、骨を折ってメイドに支えられていた姿。




毎日必ず顔を出していたのにいきなり来なくなると気になるのは人の性なのか。




メイドはいつも「私にも分かりません」と答えていたけど、今日は違った。