着替えて髪をとかしていると、コンコン、とノックの音がした。

「はい。」
返答に答えて入って来たのはマーサだった。

「お早うございます。もうお目覚めだったんですね。ご気分はいかがでございますか。」

「ええ。大丈夫。スープが効いたみたい。」

ニコリと笑って言うと、マーサもニッコリして

「それは良かったです。お仕度が済みましたら食事のご用意を致しますね。」

そう言ってマーサは凛々からブラシを受け取り、サイドの髪を編み始めた。

(やっぱり触られると気分が悪い…)

でも一生懸命してくれるマーサに悪くて言えなかった。

「さあ、出来ました。」
凛々は鏡の中の自分を見て、
(こうして見るとこの顔、お嬢様だなあ。)
と他人事の様に見ていた。
やっぱり自分の顔とは思えない。

「本日は食堂にお食事が整っております。お連れ致しますね。」
マーサはそんな凛々の気持ちに気づく事なくテキパキと動いていた。

「では参りましょう。」
「うん。」

椅子からゆっくりと立ち上がった凛々を見て、マーサは目を潤ませた。

「リリー様。お戻り頂けて本当に良かったです。皆、お会い出来る日をどんなに心待ちにしていたか!!ああ!一人で感激してちゃいけませんね。さあ参りましょう。」

凛々は何も言えなかった。

わたしは何も覚えてない。これからどうする?

今は不安で一杯だった。