「お早うございます。リリー様。」

いつの間にか眠ってしまったようだ。

いつも寝起きが良いのが自慢なのに、まだ眠い。

「うーん。まだ眠い。今日は寝かせて。」
凛々がまた寝ようとシーツを引っ張ると、
「もちろん構いませんが、もう一週間もお休みですので、一度食事をなさっては如何かと思いまして。」

そうなんだ。私そんなに寝てたんだ。


それに何だろ?ママの声にしては変な感じ。


一週間。ふーん。人ってそんなに眠れるものなのね……


「えぇっ!一週間?」

「はい。」

凛々はガバッと飛び起きた。


凛々は急に現実に引き戻され、自分がいる場所が家じゃないと気づいた。

寝室のカーテンを開けながら、メイドらしき女の人が話している。


この人は誰?


カーテンを全て紐で留めると、こちらを向き、じーっと凛々を見て急にワッと泣き出した。

「な、何?どうしたの?」

「生きているうちに、またリリー様と会えるなんて!私は嬉しいんです。」

中年になろうかというこのふくよかな女性に見覚えがない。

凛々が反応しないのを見て黙っていられなくなったのか
「マーサです!」
と自ら名乗った。

「やっぱり私が分からないんですね。ジャスティス様の仰っていた通りに。」

一気に喋るとまたワッと泣き出した。

…えっと。どうすればいいんだろ。
取り合えず慰めてみる。

「泣かないで、えっと、マーサ?私、まだ良く分からなくって。」

と肩を抱くと

「分かってますとも!記憶がないかもしれないと聞いていました。ですが、懐かしいのと、一番可愛がってくださったマーサを忘れていることが悲しくて、つい。取り乱して申し訳ありませんッ!」

そう言ってまた涙を溢れさせた。

「わ、分かったから。落ち着いて。ね?」

凛々は一生懸命慰めた。
何だか憎めない人。覚えてはいないけど私は、彼女を大好きだったに違いない。