凛々は驚いた。
魔界の風景は一変し、遠く、街並みに使われている石畳の赤や黄みがかった茶色の色合いまではっきり見えて、街にも色があることを初めて知った。

今までこんなのなかったよね?大きな月。クレーターがはっきり見える。それにこの月…


「光ってるの?」


「ああ、そうだ。」


ジャスティスはバルコニーの手刷りの所まで凛々を運ぶと、気遣いながらそっとおろした。


「400年振りの月だ。この国が黄昏時の国と言われた由縁だ。」


バルコニーに身を乗り出して月を見つめる凛々を支えるように腰に手をまわしてジャスティスが説明した。


「…私達が契約の神に認められた証だ。
聞こえるだろう?城の者も、民も喜びに沸き返っている。」


凛々は月を見つめ続けた。


…そういえば。マーサが 一度そんな話をしていた。
昔は闇ばかりでは無かったと。


「…皆が、本当の事を教えてくれたら良かった。そうしたら…」


涙する凛々をジャスティスが後ろから抱きしめ、耳元に唇を寄せた。


「本当の事を知ったら、何かが変わった?凛々の気持ちは直ぐに私に向いた」


低く響く声にドキッとした。