ヨクモ、ヨクモ、タロをコンナメニ…!

凛々は怒りで我を忘れ、自分の姿が変わり果てたことに気づきもしなかった。

そこに、地球にいた「山下凛々」はいなかった。
髪は黄色みがかった白色。髪が揺れている様はろうそくの炎を見ているようで儚げだ。

それとは対称的に深紅の大きな瞳は力強く輝き、怒りに満ちていた。

大理石を思わせるアイボリー色の肌は艶めいて、少女の容姿に反して大人の女性らしさを伝えてくる。

服は身体と共に燃えてなくなり、白色がかった長い髪が辛うじて身体の一部を隠していた。


「地球に永くいたので、どんなに人間臭くなっているかと思っていたが。変わらず美しいな。」

青年は目を細めて満足そうに呟いた。


凛々の怒りは頂点に達していた。
ヨクモ。
ヨクモ!

身体がどんどん熱くなり、発光していく。

それと同時に赤い大地に落ちている石も発光を始め、空中に浮いた。
そして青年めがけて飛んで行った。

青年は素早く、もう一つの手を前に出し、見えない壁を造った。

青年は魔力が強い。
そんな彼でも衝撃の強さに顔をしかめる。
(凄い力だ。だが当たり前か。私達の力は均衡しているから。)

石の勢いはどんどん増している。
(不味いな。暴走を始めたか。)

目を細めて前を見ると、凛々の身体は光に包まれ、見えなくなっていた。
「可哀想だか、少し痛い目に会って貰うぞ。」