凛々は頭が真っ白になった。

彼が持っているあれは何?一体何が起こったんだろう。
理解出来ない。

聞けば何かが変わるような気がして
「タロはどこにいるの?」
と聞いてみた。

「ずっと私が持っているが?」
それが何か?と小馬鹿にしたような返事が帰ってきた。


「あなたの手にあるのは魂じゃない?私が言っているのは犬のタロの事よ?」

やだ!この人、何いってるんだか。半笑いになった顔で、もう一度聞いた。


「ああ。体は燃えてしまったな。」
タロの魂をチラリと見て、興味なさそうに言った。


心臓がドキドキしてきた。
嘘だよね。

でも、あの人の言っている事が正しいと理解している私がいる。

あの魂は、間違いなくタロだ。
私が間違える筈がない。
例え姿が変わっても私には分かる。

だとすると。
もうタロはいない。

いないんだ。
いない。
いない。
イナイ…


「…殺さないと言わなかった?」

「ああ。約定があるからな。だから“地球”では殺してない。そして。」
青年は魅惑的な笑みを浮かべて、言葉を続ける。
「私は殺してなどいないぞ。門を通っただけだ。」


凛々の中の何かが弾けた。
怒りで目の前が赤く染まる。

「やっと、元の姿に戻ったようだな。」
青年は笑った。