暗い穴の中は、上も下も右も左も分からなかった。

暗い…と言うより黒い霧の中を歩いているみたいだった。

凛々はただ前だけを向いて歩いた。
合っているかなんて分からない。ただ、怖くて後ろは振り返る事が出来ないだけ。

どこが出口なの?ううん。それより出口なんてあるの?

何度も自問自答を繰り返しながら、果てしない道を歩き続けた。


黒い霧がはれてきて、視界が開けてきた。

霧から抜けると、そこは赤い大地。草も木も生えていない。寂しい場所だった。


凛々がいる場所から50メートル位離れた場所に、鉄の壁がある。


良く見る為に近寄ると、空に届きそうなほど高くて大きな鉄の門だった。回りには何もなく、ただ無造作に立っているだけ。
門はくすんだ空に、不気味な模様を黒光りさせて、更に不気味さを出していた。


(昔、美術館でこんなの見た事ある。上野に行ったとき。何とかの門て書いてあったような。もっと小さかったけど)


凛々はただ、見上げていた。


「来たな。」

ハッと我に返って、凛々は声のほうに目をやった。

青年が門によりかかりこちらを見ていた。