「それほどまでに、この魂が大切なのか。」
青年から、先程のような余裕の笑みは消えて、明らかに苛立っている。

「残念なことに。地球との約定があるので、私は地球の生命体を殺す事は出来ない。本当なら今すく消してやりたいところだが。」


凛々は目を潤ませながら訴えた。


「お願い。私のタロを返して。お願い。」


「私の私のと、耳障りだ。そんなに返して欲しければ、私に着いて来たらどうだ?」

「え……」

凛々が言葉の意味を理解出来ないでいると、青年の後ろに大きな黒い穴がポッカリと開いた。

「どうした?大切な物なのだろ?さあ、おいで。」

青年の瞳がきらりと光る。


凛々は躊躇した。
タロを助けたい。でも。

「まさか、迷っているのかな?助けたいと言ったのは口先だけか?これがどうなってもいいんだな?」

そういうと、さっきと同じようにタロのいる玉を出してちらつかせた。

中のタロは苦しいのか、クゥ、クゥ、と小さく鳴きながら体を震わせ、横たわっている。

「タロ!」
凛々が呼びかけても反応はない。


「どうする?」
青年が意地悪く笑って、暗闇の中に一歩踏み出した。
それと一緒にタロも消えていく。