ドキドキしてきた。


慌てて下を向こうとしたが、ジャスティスに顎に手をかけられ、上向きにされた。


「本当に辛くはないのか?」


ジャスティスは凛々を真っ直ぐに見ていた。


凛々は、この人には嘘はつけないと思った。


「本当は…嫌。バルゴは、あの人は私の知らない私を…リリーとして扱うの。でも、私は覚えてない。正直に言うと、自分はリリーじゃないと思ってる。私の名前は山下凛々なの!」


ずっと言いたかった。


皆が私をリリー·ルゥ“W”ゴードンと呼ぶ。

周りの人は皆、何か言いたげな表情を浮かべて私を見る。


嬉しそうな人、蔑む人、恭しい態度の人。


私は何も変わっていないのに。
気持ちはそのままなのに。
私は、私のままでいてはいけないの?


その時、背中を優しく押された。