「ねえ、バルゴ。お二人とも、とっても良い雰囲気じゃない?」

東屋からさほど遠くない所に控えていたマーサは、同じく控えているバルゴに話しかけた。


「まさか。お前の目は相変わらず節穴だな。だから騙されるんだ。」

腕を組み、主から目を離さず、バルゴが答えた。

「まあ!失礼ね!私は人をみる目には自信があるんだから。ほら!普段表情を殆ど見せないジャスティス様があんなに寛いだ表情で。しかも笑っているわ。」


感無量とばかりにマーサはエプロンで目頭を押さえた。


「単純なやつだな。あの女は裏切り者だ。殿下を窮地に陥れた張本人だぞ。ジャスティス殿下を王と呼べないのもあいつのせいだ!」


「落ち着いて、バルゴ。その話をしては駄目。」

マーサは声を潜めた。

「リリー様をあの女等と言うのもいけないわ。
バルゴ。リリー様は本当に前とは違うの。別人のようよ。あのお二人なら上手くいくと思う。絶対よ。」

バルゴはフンと鼻を鳴らした。

「信じられんな。」

バルゴも主の幸せを願わない訳ではない。しかしもう同じ失敗は許されない。それほど国は傾いている。

それに。


主をこれ以上辛い目にあわせたくない。


それが一番の願いだった。