「神崎先生。黒川くん、あれからどうですか?」


「ああ、まあ順調っていうか、
 いつも通り元気そうっすね。

 憎たらしさは日々倍増ですけど」


「あはは。やっぱり黒川くんには
 神崎先生が合いますね」


「どこが!?」




それから3日が経って、
宗佑は思った通り完全にはまっていた。


宗佑くらいの頭の良さがあればすぐに解けるクイズも、
今はもうカッとなって難しい難題に早変わり。


悪戦苦闘しているところを俺に見られないように装うも、
上手く隠しきれていないところが幼くてかわいい気もするんだ。





午後の回診のため、宗佑の病室に足を運ぶと、
珍しく机に突っ伏して眠っていた。


寝ている顔は穏やかで、
いつもの憎たらしさなんか全然ない。


黙っていれば普通に綺麗な顔立ちに、
寝顔は普段よりも幼い。


こいつ、俗にいうイケメンってやつだよな。


窓から射し込む夕日に目を細めると、
ふと窓辺の花が視界に映りこんだ。


この花……。



野草のような、どこかで見たことのあるような、
そんな懐かしい花なんだよなぁ。


なんだ?これ。


そっと花弁に触れようと手を伸ばした時。









「クロッカス」









後ろで透き通るような綺麗な声がした。