やっぱり。


やっぱりそうだったんだ。


桐生さんはどこか懐かしそうな笑みを浮かべて、
CDを愛おしそうに撫でた。


「そんなに大事そうに見てるのに、
 なんで処分なん……」


「いつまでも過去のことに縛られていては
 前に進めないもの」


「……っでも」


「それはそうと、神崎医師。本当にありがとうございました。
 もしよろしければ朝食をご馳走させてください」


桐生さんが話をそらして笑顔でそう言った。


聞かれたくないことっていうことか。


それ以上は口出しするな、と。


……ふーん。


この人、ますます面白いな。


まだまだ謎だらけだ。


それでもだいぶ大きなことを知ったような気がして、
ぐっとこの人が近くなったような気さえした。


「あー、でも冷蔵庫には多分なにも……」


そう言って冷蔵庫を開けると、
ほぼ空っぽなはずのその中には材料が沢山入っていた。


ああ、香奈のやつ……。


俺のためにご飯、作ろうとしてくれてたんかな?


だとしたら余計、怒るのも無理はねぇな。


でも俺はなんもしてねぇぞ!!


そりゃあ、
あんなCD勝手に持ち出した俺が悪いんだけど……。


「これだけあれば大丈夫です。
 キッチン、お借りしますね」


「あ、ああ、はい、お願いします」


「神崎医師は寝ていてください。
 疲れているでしょう?」



桐生さんが立ち上がって台所へ立つと、
袖をまくり上げて手を洗い始めた。


その背中をぼーっと見て、
そうしてベッドへと身を委ねる。



なんだろう。
この感じ……。



なんだか、すごく……
懐かしい……ような………。