「あーもう。何やってんすか?面倒くせぇ……」


「おい、神崎!またお前は……口を慎めよ」



俺が自己紹介をした後すぐ、
桐生さんは持っていた書類を再び床に落とした。



「ごめんなさい……ちょっと……」


「桐生医師。お疲れですか?すいません。
 こんな時に馬鹿な研修医を任せてしまって」



何だと!?


馬鹿って何だよ。馬鹿って。


少なくともお前よりは上なんだよ!!


頭も何もかもな!!


馬鹿に馬鹿って言われたくねぇ!!



桐生さんは首を横に振ってにっこり笑った。



「ありがとうございます。大丈夫ですよ。
 私、心臓外科医の桐生です。

 よろしくお願いします」



「ホラ、神崎。頭下げろって。
 今日からお前の先輩だ」




先輩……。


何が先輩だよ。


女につくなんて御免だね。



「まったく……。じゃあ、すいません。
 こいつお願いしますね」


















前のクズ指導医がいなくなると、
桐生さんは俺をじっと見つめて、静かに笑った。



「やんちゃなのはいいことよ」


「なっ!?やんちゃって……っ!!」







「よろしくお願いします。神崎医師」







「は……?」










神崎……





“医師”?







俺が呆然と突っ立っていると、
桐生さんはまた静かに笑った。