「桐生さん……」
俺はこの瞬間、確信した。
桐生さんはこのCDの中の“麗華”だ。
でも、苗字が違う。
なんでだろう。
なんなんだ。
この違和感は……。
教えてくれよ。
桐生さん……。
「ん……あたし、泣いてないよ……」
再びそう呟く桐生さんを見る。
嘘つけ。
泣いてんじゃん。
ていうか、
この人が泣くところ、初めて見た。
怒ることもない、泣くこともない。
ただただ、
笑うだけのこの人が泣いている。
俺の予想は外れてないと思うんだけどな……。
「桐生さん、家どこっすか?」
「泣いてないよ……あたし、笑ってるよ……」
「……ダメだこりゃ」
完全に寝ぼけてるな。この人。
俺はため息をついて、
そこらへんの書類をあさった。
桐生さん宛ての手紙を見つけ、住所を手首にメモする。
本当はいけないことだけど、しょうがない。
非常事態だ。
ていうか、
やっぱり桐生さんの下の名前、“麗華”だった、
ほんとにこのCDの麗華と同一人物なんじゃ……。
「ほら、桐生さん。立てますか?」
俺が話しかけても、
桐生さんは寝言ばっかりで、なかなか答えてくれなかった。
仕方ないよな。
疲れてんだもんな。
しょうがねぇな。
俺はそんな桐生さんをおぶってその部屋を出た。