「えっ?」
声がして、俺はふと桐生さんを見た。
目を閉じたまま、
どう考えてもまだ眠っている桐生さんの声がした。
寝言?
俺は桐生さんに近付いた。
大丈夫か?
なんか、魘されてる……。
最近俺の指導だけじゃなく、
色んなところに呼び出されてるもんな。
そりゃ、魘されるぐらい疲れるわ。
今日の夜勤は桐生さんじゃないはずだから、まぁいいか。
「桐生さん……!?」
しばらく魘されていた桐生さんの頬を涙が伝う。
なんだ!?
どうした?
なんで急に泣く!?
やばい?
これ、起こしたほうがいいのか?
「あの、桐生さ……」
「死なないで……祐兎」
「桐生さん」
―死なないで……祐兎―
は?
“死なないで”?
ていうか“祐兎”ってこれの……。
俺は手に持っていたCDを見つめた。
―遺書―
―いなくなってからも―
―あたしが医者だったら、
絶対に祐兎を死なせたりしなかったのに―
ああ。そうか。
この人、亡くなったんだ。
ていうか……桐生さん、
やっぱり桐生さんは……。
「桐生さん、起きてください。桐生さん!!」
俺は寝ている桐生さんの肩をそっと揺すった。
桐生さんはうっすらと目を開けて、顔をあげた。
ぼーっと俺の顔を見つめる桐生さんは
いつもと違ってどこか子供のような表情をしていた。
「こんなとこで寝てたら風邪引くっすよ?
夜勤じゃないんだから家に帰って―」
「祐兎……」
「は?」
桐生さんは俺の顔を見てそう呟いた。
そして……。
「笑って……?」
桐生さんはそう言った。
―笑った顔が大好きだったの―