「え……あんた、医者?」


「あなたはもしかして、研修医の?」



大きな瞳で俺をじっと捉える。


俺は負けじとその人を睨みつけた。


「神崎!本当お前は態度でかいんだから……。
 すいません。桐生医師」



うっせぇ!

先輩面すんな!


むかつくな。





……って、待て。


桐生……医師!?


今、“医師”って言ったか?


この人が?


嘘だろ……。




桐生と呼ばれた女を見ると、
落ちた書類を拾い上げて、静かに首を横に振った。


「いえ。大丈夫ですよ。
 もしかして、
 私が担当することになった研修医って、こちらの?」


「ええ、まぁ……本当にすいません」





ん?


そういえば指導医が変わるって
言ってたような、言ってなかったような……。




「おい、俺聞いてねぇよ。
 この人が指導医!?ふざけんな―」


「ほら、神崎。挨拶、挨拶!」



強制的に頭を押さえつけられ下げる状態となる。


くっそ……。


屈辱だ。



何でよりによって女なんかに……。



これじゃ、
こいつの方がまだマシだったんじゃ……。




「神崎!」


「わかってるよ!
 うっせぇな!!……すいませんねー」



軽く舌打ちをした俺を睨みつける先輩医師。


俺は顔を上げて彼女を見た。









「……研修医の神崎裕翔です」







「え……っ?」