LAST SMILE ~声を聞かせてよ~



あの日から、仕事のほとんどはデスクワークで。
最初はごねていた俺も、半ば諦めがついたのか、だんだんと慣れてきた。


今日も俺が作業をし始めると、
桐生さんはカーテンを開けて、

その隣に座って何かを書き始めた。


窓から差し込む光が、
桐生さんの横顔を綺麗に照らし、


心地良く吹く風が髪を揺らした。


俺はそんな彼女に無意識に見入っていた。


この人、なんでこんなに大人びてるんだろ。


3つ上って、こんな違う感じだったっけ?


なんだろう。


この人を纏っているオーラが
なんだか不思議で、目が離せない……。


ボーっとしていると、
ふと顔を上げた桐生さんと目が合った。



「ちゃんと仕事してくださいね」


「すいません」



やっぱ無理だ。


この人苦手。


なんでこんなに
大人な余裕があるのかわかんねぇもん。


調子狂うわ。


この人といると。



俺は小さくため息をついてパソコンに目を移した。




「あ?」


その時、ふと目に入ったものがあった。


俺はそれに手を伸ばした。


「これ、聴くんですか?」


「えっ?」


俺が手にしたのは一枚のCD。


“Blue sky”と書かれたCDだった。


これ、良く聞いてたから知ってる。


確か、
途中から女が一人加わったっていう高校生バンドだ。



「ええ。前はね。
 よく聴いていたわ。もう聴けないけど……」


「聴かないんすか?今も確か活動中らしいっすよね?
 どっかの高校の教師がメンバーだとか、
 メンバーが一人脱退したとか、色んな噂が有名ですよね?」



「そうね……」


「まぁ、CDを出したのはこの一枚だけっすけど」


「もう、“Blue sky”はなくなってしまったから……」


なんか、
さっきから話がかみ合ってないような……。


今だって活動してんじゃん。
クリスマス限定だけど。


この人、本当はこのバンド嫌いなんじゃ……。



「かけてもいいっすか?」


「ええ。どうぞ」


桐生さんはにっこり笑った。


断りを入れて、CDをデッキに入れる。


これこれ。


この曲だよ。



ギターから始まるのがいいんだよなぁ。


ベースも上手いけど、
やっぱ憧れはギターっしょ。



あれ?


確かこのギターの人がバンド脱退したんだっけか?


もったいねぇよなぁ。ほんと。



俺はこの歌を耳にしながら、
デスクワークに打ち込んでいった。