「ん?」
地面を見ると、
つま先には可愛らしいネックレスが落ちていた。
なんだこれ?
俺はそれを拾い上げて、かざしてみた。
銀?つーか、金?
つーか……。
これってもしかして桐生さんの?
「あの、これ桐生……さんのっすか?」
俺がそう言うと、
桐生さんは振り返った。
そのネックレスをみた桐生さんは、
一瞬だけ顔を曇らせた。
はっと息をのむような、そんな表情。
この人でも、こんな顔するんだ?
桐生さんは俺からネックレスを受け取ると、
しばらくそれを眺めた。
何か、思い出のものとか?
そんな感じがする。
誰かからの贈り物?
桐生さんのその暗い表情はすぐに消え、
いつもの桐生さんに戻っていた。
「ありがとう。私のよ」
そう言って笑った桐生さんは
ポケットにそれをしまった。
「そこに入れてっから落とすんじゃねぇ?
……すか?」
「えっ?」
「そういうのは、身につけとくもんでしょ?」
俺が自分の首に指を当ててそう言うと、
桐生さんは可笑しそうに笑った。
「医者が病院で装飾品を身につけるのは、
不衛生で良くないわ」
「あっ……」
だからそんなとこに入れてんのか。
やっぱこの人、医者なんだな。
でも、こんな安物みたいなネックレス、
そんな肌身離さず、
持ち歩きたいほど大事なものなんだ?
分かんねぇなぁ……。
「さぁ、
今日はここで作業することが多くなるけど、大丈夫?」
「え?ああ、はい。大丈夫っす」
慌てて返事をして部屋に入る。
桐生さんは沢山の書類を持って、俺のそばに来た。
俺は目の前に用意された
小さなノートパソコンを見つめて、その前に座る。
うわ。
こんなにあんのかよ。
意外と人使い荒い?
俺、パソコン弱いんだけどなぁ……。
なんて、この人の前ではそんなこと言えなくて、
俺は必死にパソコン画面を睨みつけていた。


