「でもそんなの嘘よ!あり得ないわ!…というか、どっちから振ったのよ」



「私だよ」



「それで、レン様はすぐに引き下がった、というわけ!?」




「…うん」




今日の風はいつもよりも強い。
私たちの声を飲み込んでいくような、そんな風だった。
私にとっては、ありがたかった。
ハッキリと聞こえてほしくなかったし、聞きたくもなかったから。




「はっ、そんなの本当にあり得ないわ。あなたが振ったことにも驚いたのだけれど、レン様があっけなく引き下がったことはもっと驚きだわ」




「えっ、どうして?」





「あなた、わからないの?レン様はあなたといるときしかあんな素の笑顔見せていないし、何よりも楽しそうだった…」